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いつものように、診察と注射をされたキリオの様子が、突然おかしくなった。
カゴに戻されたキリオはフラフラとし、クチは半開きで止まり木から
落ちそうになった。
どうしたんだろう?
先生が戻ってきたので聞いてみる。
「何だかフラフラして様子がおかしいんです」
「アレ?本当だ。ちょっと心音を聞いてみよう」
確かに心音は、普通より少しゆっくりになってるらしかった。
「この子は心臓が少し弱いのかもしれない」
その言葉に一瞬、ドキリとなる。ウソだろッ?!
「とにかく、注射はあんまり今度からしないようにしてみます」
なんでなんで?!
せっかくハゲも、生え替わりも調子良くなってきたのに・・・!
それから定期検診の時は、注射をしなくなったせいか、
あまり発作を起こすようなことはなくなった。
けれど、だんだんと脚力が弱くなってる様子に気づく。
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そしてある日、それはちょうどもう間もなくキリオが満7歳になろうと
していた時だった。
突然、キリオの身に重大な事が起こってしまった。
止まり木に留まれなくなってしまったのである。
ご飯も食べにくそうで、身体を重そうにうんしょ、うんしょという感じで、
横移動をする。
ご飯の入れ物と水飲みは、カゴの端と端にあるため、
水飲みまで行くのがとても辛そうだ。
げっ?!一大事だっ!速攻病院だーーーッ!!
診察の結果、キリオは、どうも人間でいうパーキンソン病か、
脳性マヒの疑いがあるとのことだった。
そんな・・・!!
絶句した。進行性のある病気・・・。
それは最終的にキリオが背負わされた病気だった。
「まだ、文鳥については知られていない部分がたくさんあるので、
取りあえず進行を抑える飲み薬で様子を見ましょう。
2〜3日後にまた診せて下さい」
と先生はいった。
朝晩直接飲ませる薬と、以前から飲ませている2種類の水飲みに溶かす薬。
この日からキリオは薬づけの生活となってしまった。
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ウチに戻ってから、キリオのためにカゴの中の大改造を始める。
それは、カゴの中の段差を無くすことだった。
カゴのサイズに合わせ、段ボールと発泡スチロールを用意し切る。
それを中にはめ込み、止まり木との段差を無くす。
そして先生の提案で、止まり木には柔らかい人間用のテーピングを巻き、
止まり木から滑り落ちないようにしてやる。
ご飯と水飲みも小動物用の丸い皿状のものに変えた。
そんな作業をしてる間、もしかすると、キリオとの別れが近づいている
のではないかという思いが頭を過ぎり、涙が出そうになった。
出来上がったカゴは、キリオにとってかなり移動が楽になった様子で、
キリオは何だか嬉しそうだった。
そしてご飯を食べ終わると、「出して」と鳴いた。
自分から出れないため、カゴに手を入れ、キリオを手の上に乗せ出してやる。
キリオは手の中で甘えた声を出し、うとうとと気持ちよさそうに眼をつむった。
また、別れが来そうで涙が出そうになる。
キリオ・・・。お願いだから長生きして・・・!
せめて、あと2年は一緒にいてよ・・・。
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それから一ヶ月後、病院通いは一週間に一度になり、
キリオは薬が効いてきたのか、横移動もできるようになっていた。
ある日、キリオが自分でカゴから出ようとしているのに気づいた。
”ええっ?!自分から出ようとしているッ?!”
でもまだ、自分からは出れそうにない。
だけどこの光景を眼にした時、本当に嬉しかった。
もしかすると、もうちょっと長く私の元にいてくれるのかもしれない。
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この日を境にキリオは、少しずつ良くなってるように見えた。
脚の力も少し戻って、止まり木にちゃんと掴まれるようにもなっていた。
そしてついに、自分で飛んだ!
ほんの少しの距離だけど、自分の脚で床を蹴り飛んだ!
”すごい、すごいよ!!キリオ!!!”
キリオの調子はどんどん良くなっているようで、
2週間後、かなりの距離を飛べるようになっていた。
私の後も歩いてついて回れる。
水浴びもしたそうな素振りもしている。
でも、そんなキリオを見て、ほんの少し不安が頭を過ぎった。
”何だか無理をしてるんじゃ・・・?”
でも、このキリオの様子はとても嬉しい。
嬉しいけどあんまり無理しないで、キリオ・・・。
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