3才になったある日、前々から気になっていた、右目アイリングの端の何かが、
なんだか日に日に大きくなってるのに気づいた。
目を閉じようすると邪魔そうだ。ちゃんと目が瞑れない。
これは、とにかく、医者へ連れて行った方がいいと思った。
そして、先生に診察してもらったところ、
「これは手術して取らないとダメだな。
ほっておくと、失明しちゃうかもしれないですね」
”えっ!?しゅ、手術ッ!?そんなーッ!!”
頭がクラクラした。
しかも先生曰く、
「麻酔で死んじゃう子もいるので、一応覚悟して置いて下さい。
明日手術しますから、午後にでもお電話下さいね。」
その言葉を聞き、涙が出そうになった。
”死んじゃうかもしれない・・・キリオが・・・?”
目の前が真っ暗になった。
「・・・宜しくお願いします」
そういってキリオを預ける。
キリオは、「置いていかないでーっ!」とばかりに鳴いていた。
ウチに着いてからも、キリオのことで頭が一杯で、じわっと涙が出てくる。
その日は当然のごとく、私は眠れなかった。
翌日も午前中から何も手が付かない。
もしもの事を考えると、ご飯も喉に通らないほどだった。
そして極度の不安で心臓はバクバクいってる。
”神様、どうか私からキリオを連れていかないで下さい。お願いします!
私の寿命をキリオに分けて下さい。神様!!”
普段は無宗教な私が、初めて神様にお願いした瞬間だった。
●
午後の診察時間まで気が遠くなるような長い時間だった。
そして午後3時、診察開始時間にすぐ電話をする。
看護婦さんが電話に出た。
「あの・・キリオは・・・っ!?」
すると先生に代わり、
「大丈夫ですよ。
手術も終わって、今麻酔から目が覚めてご飯を食べ始めました」
”ああ〜〜、よかった・・・。キリオ、よかった・・・。”
それまでの緊張感から、放心状態になる私。
●
術後一週間、キリオは入院した。
その間、面会に行くとキリオの右目の辺りは、多量の血の痕跡があり、
何とも痛々しい姿だった。
そして私に気が付くと、気が狂わんばかりに鳴く。
”ごめんね。もうちょっとで退院だから、我慢するんだよ・・・”
そして、待ちに待ったやっと退院の日が来た。
”早く早く!キリオを迎えに行かなきゃ!!”
病院に着いて診察室に入る。
先生がキリオを連れて来た。とても元気そうでホッとする。
「検査の結果、腫瘍は良性でした。
しばらくは、カゴから出したりしないように」
”うっ?なかなか難しいことを・・・。”
でも、やっとウチに帰れるんだ♪
キリオはウチに着いた途端、出して出してと催促の声を出す。
”うーん。ダメなんだって!一週間は安静にっていわれてるんだから〜!”
甘えん坊のキリオとキリオ依存症の私。究極の我慢大会だ。
つらい、つらすぎる・・・。
しかし、やはり耐えられない私は、何とかキリオに触りたい。
そこで、苦肉の策。
カゴの中に手を入れ、乗せてやる。
”キリオ、これで我慢してくれっ!”
キリオにはこちらの気持ちは分かってもらえないので、
何で外に出してもえないのかと、イライラしガリガリ指を噛み続ける。
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そんな風に我慢を重ね続けた私ではあるが、
さすがに5日目になると、もういいんじゃないかという気になってくる。
”少しだけならいいよね?ちょっとだけ・・・。”
久しぶりの外で、ものすごくキリオは喜んでいた。
だが、ストレスが溜まっているのかなぜか激しく攻撃。
そして、久しぶりに嗅ぐキリオの匂い。暖かさにウットリする。
でも、あんまり長く出してやれないのだ。(涙)
もっともっと遊びたいキリオを尻目に、泣く泣くカゴに戻す私。
・・・けれど後々考えてみると、キリオの病院通いは、
これから始まったばかりだったのだ。
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