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それは、突然やってきた・・・。
飛べるようになって2〜3日経った日、キリオはいつものように朝、
薬を飲んだ後、しばらく私の脚の脇で幸せそうに寝ていた。
そして午後になり、私はゲームに夢中になっていた。
その間、キリオは大人しくカゴの中で過ごしていたのだ。
そして夕方4時過ぎだった。
キリオに異変が起こったのは・・・!
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突然キリオが警戒するような声で鳴いた。
「ピピッ!ピピッ!!」
この声に私は最初、またカラスが窓の外の近くを飛んだのだろうと思い、
「どうした?カラスなんていないよ?」
と声を掛けた。
しかし、キリオは激しく警戒の声を上げている?!
「どうしたのっ?キリオ?!」
と、カゴの中のキリオを出そうとした途端、キリオはカゴから飛び出した。
興奮し、警戒音を出している。
そしてやっと捕まえたと思ったら、闇雲にどこかへ飛んで行こうとする。
ソファーの上に行ったキリオは、口を半開きにしていた。
様子がおかしい。
首を横に振り倒し、ビクッビクッっとさせている。
抱いて落ち着かせようとしても、治まらない。
この時私は
「この子、死んじゃうかもしない!?」
と、咄嗟に思った。
震える手で急いで、病院に電話する。
「キリオの様子がおかしいんですッ!!」
「急いでこっちに来れますか?」
そんなやりとりの間にも、キリオは手の中にいるにも関わらず、
激しく首を痙攣させ、もうその頃には警戒音ではなく、
ギャアギャアという叫び声に変わっていた。
急いで支度をし、キリオを小さなカゴに入れ、家を出た。
涙が出てくる。
「頑張れッ!キリオ!今、病院に連れて行くから!!」
カゴに入っているキリオは、もはや眼の焦点すら合っていないようだった。
私が声を掛けているのも分からない様子だった。
●
病院に着くと、キリオの様子を見た先生は、
「とにかく酸素をたくさん吸わせて上げてやらなければ。
預からせてもらいますね」
といった。
そして、診察室から出た呆然とする私に
「一応できるだけのことはしますが・・・覚悟しておいて下さい」
と声を掛けた。
私はその時、もうなにが何だか分からなくなっていた。
何が起こってしまったのか・・・。
そしてそのままフラフラと、キリオを入れてきた空のカゴを持って、
ボーとしたまま家路に着いたのだった。
さっきまでいたキリオのいない大きなカゴを、ボーっと眺める。
そして、自分でも訳が分からない行動をしていたのだった。
「大丈夫、大丈夫。キリオは大丈夫だ!」
と、自分に言い聞かせるように、また淡々とゲームの続きをやり始める。
けれど、頭の片隅であの状態のキリオでは助からないだろうと
いうことも分かっていた。
●
不安な気持ちで眠れぬ夜を過ごし、翌日朝9時ちょっと前、
これから病院へ電話をしようと思った矢先だった。
突然ベルが鳴った。
イヤな予感がし、ドキリとする。
電話を取った。
「もしもし・・・」
「あのですね。キリオちゃん、今朝亡くなりました・・・。」
”やっぱり・・・!?ああッ!!!!!”
声が震える。
「今日は病院お休みなものですから、明日迎えにいらっしゃって下さい」
「分かりました・・・。」
キリオが死んでしまった。
”あれが最期だったんだ・・・。”
そう考えると同時に、滝のように涙が溢れてきた。
その日は一日中、泣いた。
”キリオはもういない。もういないんだ・・・!”
病院で逝ってしまうなら、あんな様子でも家で、私の手の中で、
逝った方が幸せだったのかもしれない、などという後悔もした。
”甘えん坊のキリオ・・・。
怖かっただろうね。一人で逝くのはどんなにか怖かっただろうね・・・”
そんなことを考えていると、どんどん涙が溢れてきた。
●
翌日、キリオを迎えに病院に行った。
診察室に入ると
「キリオちゃん、頑張りましたよ・・・。」
と先生がいった。
そして、小さな箱に入ったキリオを連れてきた。
「あの後、少し落ち着いたんですが、結局は触ろうとすると
同じようになってしまって・・・」
”ああ、最期にもう一度キリオに会いたかった・・・!”
「色々ありがとうございました・・・。」
それだけいうのが精一杯だった。
そして病院から出る時、先生が二人でキリオを見送ってくれた。
”最期まで助けようと精一杯やってくれて、見送ってくれてる。
キリオ、いい先生に巡り会えて良かったね。
さあ、家に帰ろう・・・。”
●
・・・・・甘えん坊のキリオは、知らないところに一人でいるのは
寂しいだろうと思い、ペット霊園で火葬してもらい、小さなお骨になって
今も家にいる。
だから、いつも私と一緒だ。
キリオと出会え、一緒の時間を過ごせ、本当に楽しかった。
幸せだった・・・。(END)
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