懐古編(仮)
一体どれほどの時間、眠り続けていたのだろうか。障子戸から差し込む、眩しい朝陽に目を細めながら侍は目覚めた。ぼんやりと脳裏に浮かぶのは、あの一方的な戦いであった。そう、夜屍斗により深傷を負った彼は、ラグを雫の元へと送り届けた後戻ってきたルトと、彼の愛馬によって庵へ運ばれたのであった。普通ならば命を落としていたかもしれぬ傷であった。しかしながら、またもや彼をその死の淵から呼び戻したのは、雫の吹く文鳥笛とルトの声だったのである。