懐古編(仮)

  第十一話

「さて・・・何年ぶりの再会か?」

茶屋の前に並ぶ二人の姿があった。
侍は冬磨に誘われ、茶屋へと脚を運んでいた。

「冬磨、なぜ俺があそこにいると分かった?」
「町外れで変わった色の髪の男を見た、って聞いてな。
 それでピン!と来た訳だ」

その言葉に侍は苦笑する。
目立たぬよう菅笠を被っていたのだが、
それでも目立つという訳か。

「どうした?何か用事でもあって戻ったのか?
 いや・・・あれきり姿を消しちまって・・・
 お前、今どこにいる?」
急に、冬磨の声のトーンが下がった。

「冬磨・・・」
「俺は!俺は心配してたんだぞ!
 何も告げずにいなくなるなんて・・・!」
「冬磨・・・俺は・・・」

「いや・・・分かってるんだ。お前の性格は。
 というか、お前らしいけどな」
フッと冬磨は笑った。

この変わった色の髪と目の色のせいで、
子供の頃から自分の側には人が寄りつかなかった。
あの頃はそれでも構わなかった。
剣の道だけが俺の心のよりどころだったからだ。
だが唯一、その中で冬磨だけが他と変わらぬ態度で
接してくれた。
けれど、その冬磨にさえ、本当は心を開かずにいたことは、
冬磨自身も分かっていたに違いない。


「それにしても・・・
 何だかお前でかくなったなぁ?」

突然、冬磨はしみじみと彼を見つめ、そう言った。

「冬磨・・・お前は変わらないな」
侍は笑った。

「えっ?」
「お前のその明るさと突拍子のなさだ」
「何だと?!」
今度は侍の言葉に冬磨が豪快に笑った。

「お前・・・。
 お前は変わったようだ」
「ああ・・・」
「なんというか、張りつめた空気が取れて、
 柔らかくなった」
「そうか?」
「そうだ」
冬磨は少し嬉しそうだった。

”それはルト達と雫のお陰だ”と、侍は心の中で呟く。




BACK 1
NEXT 1

MOMO'S WEB DESIGN
mo_news Ver2.00