ヒタヒタと冷たく、 真っ暗な闇の中で侍は歩き続けていた。
この場所は見覚えがある・・・。 そう思った。
そして、ふと自分の胸元を見ると、 心臓近くまでパックリと切り裂かれた傷口からは、 夜屍斗の匂いが漂ってることに気付く。
吐き気のする匂いだった。 そして、その匂いは遙か昔の記憶へと彼を導いた。
夜屍斗ともう一人の姿。
それは何かの儀式のようだった。 その人物は夜屍斗から血杯を受け取り、 一気にそれを飲み干す。
夜屍斗は満足げな表情を浮かべている。
”あれは・・・?
似ている。 だが、髪の色は黒い。 その姿をもう一度目を凝らして見る。
そしてギクリとした。 ”まさか・・・?”
彼は自分の目を疑う。 鼓動が緊張のため早鐘を打った。
ゆっくりと彼はその人物に近づく。
”血の・・・契・・約・・・か?”
そう思った瞬間、 彼のこめかみがズキズキと痛んだ。
俺の血の中にアイツが・・・?!
彼は、愕然とする。 だが、紛れもなくそこにいるのは自分に間違いなかった。
私は夜屍斗の血杯を飲み、闇へと堕ちて行ったのか・・・ 自分の中に眠る狂気。 それが夜屍斗からの贈り物だったとは。
徐々に鮮明になってくるその記憶。
人の世に絶望した俺は、 夜屍斗に誘われるままそれに従った。 そう、人への激しい嫌悪感と共に。 自分自身も含め、全て滅んでしまえばいい、と。 |