懐古編(仮)

  第七話

「ねえ・・・?侍」

それまで口を噤(つぐ)んでいたルトが、
侍に向かって言った。

「うん?なんだ?」
「さっき・・・その、雫おねぃちゃんに・・・」
何やらモゴモゴとするルト。

「なんだルト?ハッキリ言え」
侍は笑った。

「あのぅ〜?
 何を・・・何を言ったんでしか?
 それに・・あのぅ・・・」
「気になるのか?」
「だって・・でしぃ・・・」

「自分の気持ちを伝えた」
「えっ?!」
「雫に伝えたのだ」
サラリと言う侍に、ルトは肩の上から転げ落ちそうになる。

「えええええっ?!!」
「意外か?」
侍はまた笑った。

「ボク・・・
 正直、侍は言えないんじゃないかと思ってたでしよ」
「そうだな・・・
 私も自分の気持ちに気付いてからは、
 言うまいと思っていた」
「なんだ・・・
 なんだ、そうだったんでしか・・・」

「私の中で雫の存在が大きくなり過ぎ、
 失ってしまったらと思うとな。
 それ故、距離を保とうとしていた」

ルトはじっと侍の顔を見つめた。
何か今までの侍とは違う、ルトはそう思ったのだった。

「侍・・・」
「うん?」
「ううん。何でもないでし!」

侍の心は穏やかで、かつ晴れやかだった。
もはや迷いもなく、恐れもない。
自分と雫、そしてキリの血を受け継ぐルト達とは、
何度生まれ変わっても繋がっているのだと。




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