「ねえ・・・?侍」
それまで口を噤(つぐ)んでいたルトが、 侍に向かって言った。
「うん?なんだ?」 「さっき・・・その、雫おねぃちゃんに・・・」 何やらモゴモゴとするルト。
「なんだルト?ハッキリ言え」 侍は笑った。
「あのぅ〜? 何を・・・何を言ったんでしか? それに・・あのぅ・・・」 「気になるのか?」 「だって・・でしぃ・・・」
「自分の気持ちを伝えた」 「えっ?!」 「雫に伝えたのだ」 サラリと言う侍に、ルトは肩の上から転げ落ちそうになる。
「えええええっ?!!」 「意外か?」 侍はまた笑った。
「ボク・・・ 正直、侍は言えないんじゃないかと思ってたでしよ」 「そうだな・・・ 私も自分の気持ちに気付いてからは、 言うまいと思っていた」 「なんだ・・・ なんだ、そうだったんでしか・・・」
「私の中で雫の存在が大きくなり過ぎ、 失ってしまったらと思うとな。 それ故、距離を保とうとしていた」
ルトはじっと侍の顔を見つめた。 何か今までの侍とは違う、ルトはそう思ったのだった。
「侍・・・」 「うん?」 「ううん。何でもないでし!」
侍の心は穏やかで、かつ晴れやかだった。 もはや迷いもなく、恐れもない。 自分と雫、そしてキリの血を受け継ぐルト達とは、 何度生まれ変わっても繋がっているのだと。 |