それから数日後。
旅支度を整えた侍の姿があった。 雫は不安げな表情で彼を見つめていたが、 いってらっしゃいませとだけ彼に伝えた。
侍はラグに、 ”なるべく雫の側を離れるな”と、固く言い聞かせた。 ラグは、一人雫と共に残るのを不満げにしていたが、 前回の、 自分の取った行動に責任を感じていたのであろうか、 「分かったでちよ・・・」 と小さく呟く。 その言葉を聞き、侍はラグの頭を優しく撫でる。
ルトはというと、 少し離れた木の上から陽気な声で歌っている。
侍は一歩踏み出そうとするが、 ふと思い付いたように雫に近づき、そっと抱き寄せた。
侍は彼女の耳元で呟いた。 ”心配ない。必ず戻る”と。
そして、更に小さな声で雫に何か言った。 それに応えるかのように、彼女はコクリと頷く。
”さ、行くぞ”と彼は、木の上のルトに目で訴えた。 ルトはそれに気付くと、ちょこんと彼の肩に乗る。
「では、行って参る」
そして、遠ざかる侍の後ろ姿を、 雫はいつまでもいつまでも見送るのだった。 |