雫が部屋を後にし、しばらく経つと、 侍はゆっくりと床から起き上がった。 今一度夜屍斗によって付けられた傷を見た。 傷口はもう閉じているが、生々しい記憶が蘇る。 だが、暗闇で嗅いだあの匂いはもうしてはいない。
彼は唇を噛み締める。
と、その時であった。 枕元に置いた刀が猛烈な光りを放つ。 それはかつて見たこともない光だった。
ビリビリと刀は振動し、何かに共鳴してるようだった。
その様子に驚き、 床から起き上がった彼の目に映ったものは、 霧王の姿であった。
”己の弱さを認め、蘇りし、我が友・・・”
心の奥深くにまで響き渡る暖かな声だった。
”お主が持つべき真の刃はここにあり。 さあ、この刃と共に戦いに赴くがいい。 我と我の力は常にお主の側に・・・”
霧王がそう言うと、 だんだんと光りは小さくなり、その後に現れたのは、 雫の持つ矛と同じように、 柄とつばに繊細な模様の細工が施された刀だった。
侍がその刀を手に取り、引き抜くと、 白銀の光りと共に、微かに羽音が聞こえた。 刃の角度を変えると、 そこにも透かし彫りの精巧な羽の文様が浮かび上がる。
”この刀・・・!” |