懐古編(仮)

  第四話

雫が部屋を後にし、しばらく経つと、
侍はゆっくりと床から起き上がった。
今一度夜屍斗によって付けられた傷を見た。
傷口はもう閉じているが、生々しい記憶が蘇る。
だが、暗闇で嗅いだあの匂いはもうしてはいない。

彼は唇を噛み締める。

と、その時であった。
枕元に置いた刀が猛烈な光りを放つ。
それはかつて見たこともない光だった。

ビリビリと刀は振動し、何かに共鳴してるようだった。

その様子に驚き、
床から起き上がった彼の目に映ったものは、
霧王の姿であった。

”己の弱さを認め、蘇りし、我が友・・・”

心の奥深くにまで響き渡る暖かな声だった。

”お主が持つべき真の刃はここにあり。
 さあ、この刃と共に戦いに赴くがいい。
 我と我の力は常にお主の側に・・・”

霧王がそう言うと、
だんだんと光りは小さくなり、その後に現れたのは、
雫の持つ矛と同じように、
柄とつばに繊細な模様の細工が施された刀だった。

侍がその刀を手に取り、引き抜くと、
白銀の光りと共に、微かに羽音が聞こえた。
刃の角度を変えると、
そこにも透かし彫りの精巧な羽の文様が浮かび上がる。

”この刀・・・!”




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