「お前達の目指す夜屍斗は目覚めたばかりで、 まだ全ての力を取り戻してはおらん。 だからこそ洞穴は、今まだ異空間にあるのだ。 そして陽が高くなった頃、あの異空間はこの地と交わる。 交わった時、封印されたこの地の空気が流れ込み、 一時だがヤツらの力も弱くなるのだ」
「えっ?」
そう言われてルトが見ると、自分と男のいる場所を中心に、 あの洞穴内で見たものと同じ円陣が描かれていた。
「これ・・・!」 「分かるか?これが。 今は封印を施してあるが、この場所はあの洞穴へ通じる、 もう一つの入り口って訳だ」
「えええっ?! あなたは一体・・・?! なんでそんなこと色々知ってるんでしかっ?」
だが男はその質問には答えず、ルトの頭を撫でた。 その瞬間、ルトは分かった。
この人・・・!!
「恐らく夜屍斗を完全に仕留め、封印することは難しい。 雫の手を借りずにはな」
「でも、でも! 雫おねぃちゃんの力も目も、 夜屍斗を倒さない限り戻らないんじゃないんでしか?」 「理論的には・・・な。 だがお前さんも気づいたろう? 雫の力は完全に夜屍斗の手に渡った訳ではないことも」
「えっと・・・? なんでそこまであなたは知ってるんでしか? 知ってるなら、なんで侍の前に姿を現さないんでしか? というか・・・ なら、なんで侍を止めなかったんでしかっ!」
ルトは侍の身を案じ、ちょっと憤慨してるようだった。
「それは・・・ お前さんには分からぬ事情ってものがあるのさ」
男は苦笑した。
「ともかくアイツを助け出すのはお前さんには無理だ。 俺に任せろ、な?」
と、男はルトの背を軽くポンポンと叩く。 気が焦るルトは納得がいかない、というようにそれに対し、 チッ!と小さく鳴いたのであった。 |