懐古編(仮)

  第二十七話

「お前達の目指す夜屍斗は目覚めたばかりで、
 まだ全ての力を取り戻してはおらん。
 だからこそ洞穴は、今まだ異空間にあるのだ。
 そして陽が高くなった頃、あの異空間はこの地と交わる。
 交わった時、封印されたこの地の空気が流れ込み、
 一時だがヤツらの力も弱くなるのだ」

「えっ?」

そう言われてルトが見ると、自分と男のいる場所を中心に、
あの洞穴内で見たものと同じ円陣が描かれていた。

「これ・・・!」
「分かるか?これが。
 今は封印を施してあるが、この場所はあの洞穴へ通じる、
 もう一つの入り口って訳だ」

「えええっ?!
 あなたは一体・・・?!
 なんでそんなこと色々知ってるんでしかっ?」

だが男はその質問には答えず、ルトの頭を撫でた。
その瞬間、ルトは分かった。

この人・・・!!


「恐らく夜屍斗を完全に仕留め、封印することは難しい。
 雫の手を借りずにはな」

「でも、でも!
 雫おねぃちゃんの力も目も、
 夜屍斗を倒さない限り戻らないんじゃないんでしか?」
「理論的には・・・な。
 だがお前さんも気づいたろう?
 雫の力は完全に夜屍斗の手に渡った訳ではないことも」

「えっと・・・?
 なんでそこまであなたは知ってるんでしか?
 知ってるなら、なんで侍の前に姿を現さないんでしか?
 というか・・・
 なら、なんで侍を止めなかったんでしかっ!」

ルトは侍の身を案じ、ちょっと憤慨してるようだった。

「それは・・・
 お前さんには分からぬ事情ってものがあるのさ」

男は苦笑した。

「ともかくアイツを助け出すのはお前さんには無理だ。
 俺に任せろ、な?」

と、男はルトの背を軽くポンポンと叩く。
気が焦るルトは納得がいかない、というようにそれに対し、
チッ!と小さく鳴いたのであった。




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