懐古編(仮)

  第二十六話

「う・・・ん?」

ルトが目を覚ますと、そこは薄暗い洞穴ではなかった。

「あれ・・・?ここ・・・??」
「気づいたか?」

声を掛けられ見ると、
そこには見知らぬ男が傍らに座っていた。

「だ?誰でしかっ?!!」
ルトは思わず後ずさる。

「そんなに身構えなくとも、捕って食ったりはしないさ」
男は苦笑した。

「ついにアイツはここへ来たか・・・」
「え・・・?なんでしって??」

ルトはそういった男の顔を改めて見た。

「あ・・・っ?」
「なんだ?」
「むむむむ。
 似てる・・・なーんか似てるでし・・・」

その男の髪色は、陽に焼けたように茶色で、
肌は浅黒かった。
が、どことなく彼を思わせるような、
そんな容貌を持っていた。
額や頬には傷があり、
連戦錬磨をくぐり抜けてきたような感じだ。

「あのっ!」
「なんだ?」
「あなたは一体誰なんでしか?」
「知りたいか?」
「んもー!そういう答えは止めて下さいでしよ!!」

ルトはハッキリとしない口調に苛立つ。
男は笑った。

「いずれ分かる時が来る。
 アイツとお前の敵ではないことは確かだ」
「へーえ・・・?」

疑り深そうな目つきをするルトに苦笑しつつ、

「それはそうと・・・」

と男は話を切り出す。

「どうやらマズイことになった」
「えっ?どういうことでしか?!
 ということは・・・
 侍の身に何か起こったんでしかっ?!!
 なら、早く戻らないとー!!」
「それはそうなんだがな・・・」
「助けてくれたお礼は言うでしけど、
 ボク、あなたに構ってられないでしよッ!」

ルトは洞穴へ戻ろうとする。
男はルトを捕まえ、
「まあ、待てというのに!せっかちなヤツだ」
と言った。

「ちょっ?!
 もう!離して下さいでしよー!」
ジタバタするルト。

「もうすぐ陽が一番高いところに来る。
 その時が行く瞬間だ」
「へっ?」
「それまでアイツが持ち堪えてくれるのを願おう」
「え?
 何言ってんのか全然分からないでしってー!!」
「大丈夫だ。
 お前の大事なアイツは、そう簡単にくたばらんさ」

と、男はニヤリと笑ったのであった。




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