懐古編(仮)

  第二十四話

侍の目がすうっと細くなる。
そして彼が何の躊躇いもなく、そこに脚を踏み入れると、
傍らでその様子をジッと見つめていたルトも、
彼の後に続き、中に入って行く。

入った瞬間。
ガクン、と身体が沈む込むような、そんな感覚がした。

薄暗い。
まだ中に入ってまもないというのに、入り口は見えない。
先へと進むと、前方に円陣が見えた。
だが、不思議とあの頃のような背筋がザワザワとする感覚は、
もうなかった。

ここから先は、封印を解かねばならない。
しかし、彼は一瞬躊躇する。

今、この封印を解いてしまって大丈夫なのかと。
夜屍斗を解放することにはならないだろうかと。

彼は肩の上のルトを見た。
ルトはコクンと小さく頷く。
彼もまたそれに目で答える。

彼は、意を決したように手のひらを近づけ、円陣に触った。
すると、ぽっかりと黒い穴が口を開き、彼らを飲み込む。

こうして彼とルトは、深く暗い闇へと堕ちて行ったのであった。




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