侍の目がすうっと細くなる。 そして彼が何の躊躇いもなく、そこに脚を踏み入れると、 傍らでその様子をジッと見つめていたルトも、 彼の後に続き、中に入って行く。
入った瞬間。 ガクン、と身体が沈む込むような、そんな感覚がした。
薄暗い。 まだ中に入ってまもないというのに、入り口は見えない。 先へと進むと、前方に円陣が見えた。 だが、不思議とあの頃のような背筋がザワザワとする感覚は、 もうなかった。
ここから先は、封印を解かねばならない。 しかし、彼は一瞬躊躇する。
今、この封印を解いてしまって大丈夫なのかと。 夜屍斗を解放することにはならないだろうかと。
彼は肩の上のルトを見た。 ルトはコクンと小さく頷く。 彼もまたそれに目で答える。
彼は、意を決したように手のひらを近づけ、円陣に触った。 すると、ぽっかりと黒い穴が口を開き、彼らを飲み込む。
こうして彼とルトは、深く暗い闇へと堕ちて行ったのであった。 |