侍の言葉に呆然とする冬磨。
「忘れることは簡単だ。 お前がそう望んだ時に、 俺のことはいとも容易く忘れることができるだろう・・・」
「なっ?!! そんなことはないッ!断じて!!」
「お前がそう思っても、じき忘れる時は来る」 「あきのすけ!お前はなぜそう言いきれるんだッ?!」
彼はその問いには答えない。
「俺は、お前を巻き込みたくない」 「ならば! ならば俺も共に!!」
冬磨はそう言うと、膳をはね除け、 侍の身体を強く揺さぶった。 侍は冬磨から顔を背ける。
「お前には無理だ!」 「なぜだ?!なぜ無理だと言える!!」 「これが・・・ 俺の前世からの宿命だからだ!」
「何を・・・?あきの・・・」
「分からぬのか! お前の言う通り、この目と髪が! 人とは違う力を持つ俺の、逃れられぬ運命なのだ・・・! この先俺とは関わってはならぬ!!」
それは、冬磨が初めて見る、 むき出しになった侍の感情だった。 これほどまでに激しいあきのすけを見たことはなかった。
呆然とその場に座り込んだままの冬磨。
何があきのすけの重責となっているのか、 自分とあきのすけのその距離を阻む物が何なのか、 冬磨には分からなかった。
だがしかし、やはり自分が思っていた通り、 あの容姿が何かを物語っていたのかと。 そして、人並み外れた何かを持ち、生まれた者の宿命は、 他の誰が止めることも、手を貸すこともできないのだ、 とその時悟ったのである。 |