懐古編(仮)

  第二十話

侍の言葉に呆然とする冬磨。

「忘れることは簡単だ。
 お前がそう望んだ時に、
 俺のことはいとも容易く忘れることができるだろう・・・」

「なっ?!!
 そんなことはないッ!断じて!!」

「お前がそう思っても、じき忘れる時は来る」
「あきのすけ!お前はなぜそう言いきれるんだッ?!」

彼はその問いには答えない。

「俺は、お前を巻き込みたくない」
「ならば!
 ならば俺も共に!!」

冬磨はそう言うと、膳をはね除け、
侍の身体を強く揺さぶった。
侍は冬磨から顔を背ける。

「お前には無理だ!」
「なぜだ?!なぜ無理だと言える!!」
「これが・・・
 俺の前世からの宿命だからだ!」

「何を・・・?あきの・・・」

「分からぬのか!
 お前の言う通り、この目と髪が!
 人とは違う力を持つ俺の、逃れられぬ運命なのだ・・・!
 この先俺とは関わってはならぬ!!」

それは、冬磨が初めて見る、
むき出しになった侍の感情だった。
これほどまでに激しいあきのすけを見たことはなかった。

呆然とその場に座り込んだままの冬磨。

何があきのすけの重責となっているのか、
自分とあきのすけのその距離を阻む物が何なのか、
冬磨には分からなかった。

だがしかし、やはり自分が思っていた通り、
あの容姿が何かを物語っていたのかと。
そして、人並み外れた何かを持ち、生まれた者の宿命は、
他の誰が止めることも、手を貸すこともできないのだ、
とその時悟ったのである。




BACK 1
NEXT 1

MOMO'S WEB DESIGN
mo_news Ver2.00