「あ・・・」 女はヘナヘナとその場にへたり込む。
「大丈夫か?」 侍はまた菅笠を深く被り直すと、屈んで女に声を掛けた。
「ええ、ちょっと、き、緊張で・・・」 「奥方様っ!大丈夫でございますかっ?」
使用人らしき者が慌てて駆け寄る。
「・・・ちょっと待つがいい」
侍は寺へと戻り、しばらくすると水を手に女の元へ戻った。
「さあ、これを飲んで一息吐かれよ」 「あ、ありがとうございます・・・」
ゴクゴクと女の喉が動き、水を飲み干す。
「どうだ?」 「お陰様で何とか・・・」 「怪我はないか?」 「ええ。何ともございません。」
そういうと、 ゆっくりと女は使用人の手を借りて立ち上がり、
「本当にあなた様が通り掛かって下さらねば、 どうなっていたことやら。 危ないところをありがとうございました」
と深々と頭を下げた。
「もう薄暗い。良ければ家まで送って差し上げるが・・・」 「あ、でも・・・」 「奥方様、この方のおっしゃる通りになさっては? この辺は変な輩も多いことですしね。 もう先ほどみたいな怖い思いは勘弁して下さいまし」 「そう・・・、 お前がそうも言うなら・・・ では、お言葉に甘えて、お願いしてもよろしいでしょうか?」 |