懐古編(仮)

  第十三話

その後。
侍は茶屋からそう遠くない、
父と義母の墓のある寺へと脚を運ぶ。

これもまた、何か自分にとって必要があることかもしれない、
そう考えたからであった。

墓前のある場所まで来ると、屋敷同様荒れた墓がそこにあった。
誰も訪れる者がないのだろう。
苔が生え、雑草に囲まれた墓は殺風景で、
かつ、物哀しさも漂わせていた。

侍は黙々と丁寧に墓周りを掃除し、
花を手向け、手を合わせる。
その思いはどれほどのものか、
様子からは窺い知ることはできない。

かなり長い間墓の前で手を合わせていた侍は、
徐に立ち上がる。
そして、深く菅笠を被ると、
後ろに束ねた長い髪はその中にしまった。
これで多少は目立たないだろう。


夕焼けの空にカラスがカァカァと鳴き、
一羽二羽と次々にねぐらへと帰って行く。
冬磨との約束には、刻二つほどまだ時間があった。
侍はまた屋敷の方へ戻ろうかと考えた。

とその時である。




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