「さて・・・何年ぶりの再会か?」
茶屋の前に並ぶ二人の姿があった。 侍は冬磨に誘われ、茶屋へと脚を運んでいた。
「冬磨、なぜ俺があそこにいると分かった?」 「町外れで変わった色の髪の男を見た、って聞いてな。 それでピン!と来た訳だ」
その言葉に侍は苦笑する。 目立たぬよう菅笠を被っていたのだが、 それでも目立つという訳か。
「どうした?何か用事でもあって戻ったのか? いや・・・あれきり姿を消しちまって・・・ お前、今どこにいる?」 急に、冬磨の声のトーンが下がった。
「冬磨・・・」 「俺は!俺は心配してたんだぞ! 何も告げずにいなくなるなんて・・・!」 「冬磨・・・俺は・・・」
「いや・・・分かってるんだ。お前の性格は。 というか、お前らしいけどな」 フッと冬磨は笑った。
この変わった色の髪と目の色のせいで、 子供の頃から自分の側には人が寄りつかなかった。 あの頃はそれでも構わなかった。 剣の道だけが俺の心のよりどころだったからだ。 だが唯一、その中で冬磨だけが他と変わらぬ態度で 接してくれた。 けれど、その冬磨にさえ、本当は心を開かずにいたことは、 冬磨自身も分かっていたに違いない。
「それにしても・・・ 何だかお前でかくなったなぁ?」
突然、冬磨はしみじみと彼を見つめ、そう言った。
「冬磨・・・お前は変わらないな」 侍は笑った。
「えっ?」 「お前のその明るさと突拍子のなさだ」 「何だと?!」 今度は侍の言葉に冬磨が豪快に笑った。
「お前・・・。 お前は変わったようだ」 「ああ・・・」 「なんというか、張りつめた空気が取れて、 柔らかくなった」 「そうか?」 「そうだ」 冬磨は少し嬉しそうだった。
”それはルト達と雫のお陰だ”と、侍は心の中で呟く。 |